それは自宅から会場に向かい、地域限定写真セットを並んで買い、
開場時間すぐに場内に入り、まだ誰もいないホールの中で
ヲタTに着替え1時間、ゆっくりと気分が高まっていくのを
ジワリジワリと感じながら開演を迎える一連の儀式の一部だった
ほとばしる汗と共にめいっぱい振られたサイリウムは
2公演終わって家に帰ってからもほんのりと光っている
明かりを消した部屋のふとんにそのサイリウム2本と
醒めやらない現場の興奮を抱え込んで潜り込むと、
ふとんの中は2つの色が溶け合いながら淡く染め上げられている
その光はちょっと幻想的で、客席を埋める様々な光の海を思い起こさせたりする
あまりにも熱すぎるコンサートの現場、彼女たちのパフォーマンス、会場との一体感、、、
彼女たちが俺たちの顔を明るく笑顔に照らしてくれる太陽だとすれば、
サイリウムは俺たちがほんの少しだけ彼女たちを照らし返すための小さな照明だ
朝目覚めると枕元にはグリップの色だけがまぶしい無色の棒が残っている
そうしてやっと日常の世界に戻ってくる
100均のサイリウムの存在を知り、
オクをやるようになってからは現場でほとんどお金を使わなくなった
写真もまず買わない
安物のサイリウムは家に着く頃にはもうほとんど光らないので会場で捨てる時が多い
一緒に家に戻るのはぐっしょりと濡れたヲタTのみである
今度の現場ではまたあの1本300円のサイリウムを買ってみよう
そしてそれを目一杯彼女たちめがけて振って、
家に持って帰って共にふとんに潜り込もう
そこにはきっと至福の1日があるに違いない